人生の最期をどのように送るか、その選択肢は広がりつつあります。近年注目されているのが「自由葬」です。自由葬とは、従来の仏式などの宗教儀礼にとらわれず、故人の人柄や生前の意向、遺族の希望を最大限に反映させて行う葬儀形式のこと。決まった形式や流れがないため、音楽をふんだんに使ったり、故人の趣味や作品を展示したり、参列者が自由に思い出を語り合ったりと、文字通り自由な発想で企画・実行できるのが特徴です。なぜ自由葬が選ばれるのでしょうか。一つには、人々の価値観の多様化があります。宗教観が希薄になった、あるいは特定の宗教を持たない人が増えたことで、「形式に沿った葬儀でなくても良いのでは」と考える人が増えています。また、故人の「自分らしく送られたい」「残された家族に負担をかけたくない」といった生前の願いを叶えたいという遺族の思いも強く反映されます。従来の形式では表現しきれなかった故人の個性や魅力を、葬儀という場で改めて分かち合いたいというニーズもあります。自由葬には様々な形があります。宗教色を完全に排してお別れ会形式で行うもの、好きな音楽を生演奏する音楽葬、故人の好物で参列者をもてなすもの、思い出の写真をたくさん飾るものなど、文字通り多種多様です。最近では、火葬だけを行い、後日改めて自由な形式でお別れの会を開く「直葬+お別れ会」という形も増えています。自然葬(散骨や樹木葬など)も、広義には自由葬の一種と捉えられることがあります。自由葬を選ぶメリットは、何と言っても「故人らしさ」を追求できる点にあります。参列者にとっても、故人との思い出を振り返り、心に残るお別れができる可能性が高いでしょう。一方で、注意点もあります。自由だからこそ、企画や準備に手間と時間がかかります。また、親族の中に従来の形式を重視する方がいる場合は、事前にしっかりと話し合い、理解を得ることが不可欠です。費用についても、内容によっては従来の葬儀よりも高額になることもあります。自由葬を検討する際は、まず家族で故人について語り合い、どのような形でお別れしたいのかイメージを共有することが大切です。そして、自由葬に対応できる葬儀社を探し、具体的な内容や費用について相談しながら進めていくのが良いでしょう。人生の終わりにふさわしい、心温まるお別れの場を創り出すためにも、自由葬は有効な選択肢と言えます。
故人らしい送り方自由葬という選択