葬儀や法事の際に故人へお供えする御供物には、心を込めて弔事用ののし紙をかけるのが正式なマナーです。しかし、のしに関するマナーは細かく、地域や宗派によっても異なるため、うっかり間違えてしまうことがあります。故人や遺族へ失礼なく弔意を伝えるためにも、特に注意したい失敗しやすいポイントをいくつかご紹介します。まず、最も多い間違いの一つが、表書きの選択です。四十九日前は「御霊前」、四十九日以降は「御仏前」と使い分けるのが一般的ですが、浄土真宗では時期に関わらず「御仏前」とします。この宗派による違いを知らずに「御霊前」としてしまうケースが見られます。また、神式やキリスト教式など、仏式以外の宗教では全く異なる表書きや水引を用いるため、相手の宗教が不明な場合は特に注意が必要です。次に、水引の色や結び方です。弔事では黒白または黄白の結び切りが基本ですが、慶事用の紅白の水引や、何度でも結び直せる蝶結びを選んでしまうのは大きな間違いです。地域によって黄白を用いる場合があることも、事前に確認しておかないと戸惑う点です。水引の本数も、一般的な御供物には5本、より丁重な場合は7本が使われますが、ここも間違えやすい点です。名前の書き方にも注意が必要です。香典袋には悲しみを表す薄墨で名前を書くのが一般的ですが、御供物ののし紙に書く名前は濃墨で書くのが基本です。ここを混同して薄墨で書いてしまうケースも散見されます。また、連名の場合の書き方(右から目上の方の順、三名までが一般的など)や、会社名で贈る場合の書き方も、意外と知られていないマナーです。内のしと外のしの使い分けも、状況によっては悩ましいかもしれません。郵送する際は内のし、手渡しする際は外のしが一般的ですが、弔事では控えめな内のしを好む人が多い傾向にあります。しかし、受付で誰からの御供物か確認しやすいように外のしを選ぶのが親切と考える人もいます。どちらが良いか迷う場合は、内のしにしておけば無難とされることが多いです。これらの注意点は、いずれも故人や遺族への配慮から生まれたマナーです。うっかり間違えないためには、事前に相手の宗派や地域の習慣を確認すること、そして迷った場合は葬儀社や専門店に相談することが最も確実です。何よりも、故人を偲び遺族に寄り添う気持ちを持って準備することが大切であることを忘れてはなりません。