核家族化が進み、地域社会との繋がりも希薄になりがちな現代において、「葬儀の間、家の留守番を、気軽に頼める人が、誰もいない」という状況は、もはや、決して珍しいことではありません。しかし、だからといって、葬式泥棒などの犯罪リスクを、放置するわけにはいきません。大切なのは、留守番という「人」に頼れないのであれば、現代の技術や、工夫を最大限に活用し、自らの手で、家を守るための、多層的な防犯対策を講じることです。まず、最も基本的な対策は、「無人であることを、外部に悟られないようにする」ことです。新聞のお悔やみ欄への掲載を控える、あるいは、掲載する場合でも、喪主の氏名のみとし、詳細な住所は記載しない、という選択も、一つの有効な手段です。また、家の前に「忌中」の貼り紙を出す習慣も、防犯の観点からは、慎重に検討すべきでしょう。次に、家の中の対策です。出かける際には、必ず、全てのドアと窓の鍵を、二重、三重に施錠します。リビングや玄関など、外から見える部屋の照明を、一つか二つ、つけたままにしておくのも、「在宅」を偽装する上で、効果的です。タイマー式の照明器具を活用し、夕方になったら自動的に点灯するように設定しておけば、さらに安心です。また、家の固定電話は、留守番電話に設定しておくか、あるいは、携帯電話への転送サービスを利用し、外部からの着信に応答できる状態にしておくと、泥棒に「留守」を確信させにくくなります。さらに、一歩進んだ対策として、ホームセキュリティサービスの活用があります。警備会社のステッカーが玄関に貼ってあるだけで、大きな犯罪抑止力となります。最近では、工事不要で、手軽に導入できる、簡易的なセキュリティシステムや、スマートフォンと連動したネットワークカメラも、数多く市販されています。こうした機器を設置し、葬儀の合間に、時折、家の様子をスマートフォンで確認するだけでも、心の安心感は、大きく違ってくるはずです。人に頼れない時代だからこそ、自らの知恵と工夫で、大切な家と、故人との思い出を守り抜く。それもまた、現代における、新しい弔いの形なのかもしれません。