香典返しなどの返礼品を贈る際、品物そのもの以上に、ご遺族の感謝の気持ちを深く伝えるのが、そこに添えられる「挨拶状(お礼状)」です。この一枚の書状は、単なる送り状ではなく、葬儀に際してお世話になったことへの感謝と、忌明けを無事に迎えたことの報告を伝える、非常に重要な役割を担っています。この挨拶状には、日本の伝統に基づいた、いくつかの独特な書き方のルールがあります。まず、最も特徴的なのが、文章中に句読点(「、」や「。」)を用いない、という慣習です。これには、葬儀や法要といった一連の儀式が、滞りなく、途切れることなく、スムーズに流れるように、という願いが込められているとされています。そのため、文の区切りには、空白(スペース)や改行を用います。次に、時候の挨拶(「拝啓 〇〇の候〜」など)は省略し、すぐに本題から書き始めます。文章の構成としては、まず、故人の俗名を記し、「亡父 〇〇 儀 葬儀に際しましては」といった形で始めます。「儀」は、「〜のこと」という意味の謙譲語です。続いて、「ご多忙中にもかかわらずご会葬を賜り かつ ご鄭重なるご香典を賜りましたこと 厚く御礼申し上げます」と、会葬と香典への感謝を述べます。そして、「おかげさまで さる〇月〇日 四十九日の法要を滞りなく相営むことができました」と、忌明けの報告を記します。この「四十九日」という言葉は、仏式のものですが、神式では「五十日祭」、キリスト教では正式な習慣はありませんが、行う場合は「召天記念」など、宗教・宗派によって用いる言葉が異なりますので、注意が必要です。その後、「つきましては 供養のしるしまでに 心ばかりの品をお届けいたしましたので 何卒ご受納くださいますようお願い申し上げます」と、返礼品を送った旨を伝えます。最後に、本来であれば直接お伺いして御礼を申し上げるべきところを、書中にて失礼することへのお詫びを述べ、「敬具」で締めくくります。日付、喪主の氏名、そして「親族一同」と書き添えて完成です。この丁寧な形式こそが、あなたの感謝の気持ちを、最も誠実に伝えてくれるのです。
返礼品に添える挨拶状の書き方