仕事がどうしても長引いてしまった、あるいは、予期せぬ交通渋滞に巻き込まれてしまった。お通夜に参列しようとする際、やむを得ない事情で、開始時間に間に合わず、遅刻してしまうことは、誰にでも起こりうることです。そんな時、「もう遅いから、参列するのはやめておこう」と諦めてしまうのは、あまりにもったいないことです。たとえ遅れてしまっても、故人を悼む気持ちを持って駆けつけることは、決して失礼にはあたりません。ただし、その際には、厳粛な場の雰囲気を壊さないよう、最大限の配慮とマナーが求められます。まず、大幅に遅れることが分かった時点で、もし可能であれば、葬儀会場に一本電話を入れ、遅れる旨を伝えておくと、より丁寧な印象を与えます。会場に到着したら、すでに儀式が始まっている場合は、決して正面から、慌てて式場内に入ってはいけません。まずは、受付を探し、そこにいる係員の方に、遅れて到着した旨を小声で伝えます。「遅くなりまして、大変申し訳ございません」と、お詫びの言葉を述べ、香典を渡し、記帳を済ませましょう。そして、係員の指示に従い、式場内へと入ります。この時、儀式の進行を妨げないよう、静かに、そして身をかがめるようにして、後方の空いている席へと、そっと着席します。儀式の最中は、他の参列者と同様に、静かに故人を偲びます。焼香の案内があった場合は、すでに自分の列の順番が終わっていたとしても、最後に焼香をさせてもらえることがほとんどです。その際も、係員の案内に従い、静かに祭壇へと進みましょう。もし、到着した時点ですでに儀式が終了し、通夜振る舞いの時間になっていたとしても、問題ありません。受付を済ませた後、ご遺族の元へそっと近づき、遅れたことをお詫びした上で、「せめて、お線香だけでもあげさせていただけますでしょうか」とお願いすれば、快く祭壇へと案内してくださるはずです。遅刻したことへの罪悪感よりも、故人を思う誠実な気持ちと、ご遺族への配慮の心を、行動で示すこと。それが、最も大切なマナーなのです。
お通夜の時間に遅れてしまう場合