葬儀で着用が許されるパールのイヤリングですが、そのデザインにも、守るべき明確なマナーが存在します。基本となるのは、「シンプル」で「控えめ」であること。故人よりも目立たず、厳粛な場の雰囲気を壊さない、という大原則を、常に念頭に置く必要があります。まず、最もふさわしく、そして最も間違いのないデザインが、「一粒(ひとつぶ)タイプ」のイヤリングまたはピアスです。耳たぶに、パールが一粒だけ、ちょこんと付いている、スタッドピアスや、直結タイプのイヤリングがこれにあたります。そのシンプルさは、慎みの心を最大限に表現し、どんな喪服にも調和します。パールの大きさは、直径7mmから8mm程度のものが、上品でバランスが良いとされています。あまりに大粒のものは、華美な印象を与えかねないため、避けた方が無難です。パールの色は、白が最も一般的ですが、黒真珠(ブラックパール)や、グレーパールも、弔事用のアクセサリーとして認められています。黒真珠は、より格式高く、落ち着いた印象を与えます。次に、多くの方が迷うのが、パールが耳元で揺れる、「スイングタイプ」や「ドロップタイプ」のイヤリングです。これについては、専門家の間でも意見が分かれる、デリケートな部分です。原則としては、「揺れる」デザインは、華やかさや動きを演出し、お祝い事を連想させるため、葬儀の場では避けるべき、とされています。特に、チェーンが長く、パールが大きく揺れるようなデザインは、明確なマナー違反です。しかし、ごく短いフックの先に、小さなパールが一粒だけ、わずかに揺れる程度の、きわめてシンプルなデザインであれば、許容範囲内とする考え方もあります。ただし、これはあくまで例外的な解釈であり、年配の方や、格式を重んじる方が多い場では、不謹慎と受け取られるリスクが伴います。迷った場合は、必ず、より安全で、誰の目にも慎み深く映る「一粒タイプ」を選ぶこと。それが、後悔のない、最も賢明な選択と言えるでしょう。