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供花として蘭を贈る際のマナー
故人を悼み、ご遺族の心を慰めるために贈る供花。その中でも、蘭の花は最高級の贈り物とされていますが、その手配には守るべきマナーと手順があります。良かれと思ってしたことが、かえってご遺族の負担にならないよう、供花として蘭を贈る際の全知識を身につけておきましょう。まず、最も重要なのがご遺族の意向を確認することです。近年、家族葬の増加に伴い、訃報の案内状に誠に勝手ながらご香典ご供花の儀は固くご辞退申し上げますと、ご厚志を辞退する旨が明記されているケースが増えています。この記載があるにもかかわらず一方的に花を贈ることは、遺族の意向に反する大変失礼な行為となります。必ず案内状を確認し、もし意向が不明な場合は、直接ご遺族に尋ねるのではなく、葬儀を執り行っている葬儀社に問い合わせるのがスマートな方法です。次に、手配の方法ですが、これも葬儀社に依頼するのが最も確実で安心です。自分で生花店に依頼することも可能ですが、葬儀社に依頼すれば、その葬儀の宗教や宗派に合った花を選んでくれるだけでなく、祭壇全体のデザインや色の統一感を考慮して、最適な場所に設置してくれます。また、通夜の開式前までに確実に届けるという、時間管理の面でも安心です。供花として贈る蘭の相場は、個人名で贈る場合は一万五千円から三万円程度、法人名で贈る場合は二万円から五万円程度が一般的です。胡蝶蘭の鉢植えや、アレンジメントフラワーなど、形式は様々ですが、葬儀社に予算を伝えれば、それに合ったものを見繕ってくれます。そして、誰から贈られたものかを示す札名の書き方も重要なマナーです。個人で贈る場合は、自分のフルネームを記載します。夫婦連名の場合は、夫のフルネームの左に妻の名前のみを記します。会社名で贈る場合は、〇〇株式会社代表取締役〇〇のように、会社名、役職、氏名を正確に記載します。部署や友人一同で贈る場合は、〇〇株式会社営業部一同や〇〇大学友人有志といった形でまとめます。贈るタイミングは、通夜がある場合は、通夜当日の午前中から開式前までに届くように手配するのが一般的です。これらのマナーを守り、ご遺族の気持ちを第一に考えること。それが、あなたの弔意を最も美しく伝えるための鍵となります。
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葬儀後にいただいた蘭の花の扱い方
葬儀が無事に終わり、少し落ち着いた頃、遺族が向き合うことになるのが、祭壇を飾っていたたくさんの供花、特に鉢植えでいただいた蘭の扱いです。故人を偲んで贈られた大切な花だからこそ、最後まで丁寧に扱いたいものです。ここでは、葬儀後にいただいた蘭の花の、その後の一般的な扱い方について解説します。まず、最も一般的な方法は、親族や、葬儀でお世話になった方々へお裾分けとしてお渡しすることです。葬儀が終わった後、あるいは火葬場から戻った後などに、故人の供養になりますので、よろしければお持ち帰りくださいと声をかけ、それぞれに持ち帰っていただきます。特に、遠方から来てくださった親族や、受付などを手伝ってくれた方へ、感謝の気持ちとしてお渡しするのは非常に良い習慣です。これにより、故人を悼む気持ちを多くの人と分かち合うことができます。次に、お裾分けした上で、まだ手元に残った蘭の鉢植えを自宅で育てるという選択肢です。胡蝶蘭は育てるのが難しいというイメージがあるかもしれませんが、いくつかのポイントを押さえれば、家庭でも十分に楽しむことができます。まず、置き場所は、直射日光の当たらない、レースのカーテン越しの明るい室内が適しています。水やりは、鉢の表面の水苔やバークが完全に乾いてから、コップ一杯程度の水を与えるのが基本です。水のやりすぎは根腐れの原因になるため、注意が必要です。上手に管理すれば、翌年も美しい花を咲かせてくれる可能性があります。故人が残してくれた蘭の花を、毎年咲かせる。それは、故人を偲ぶ、とても素敵な供養の形と言えるでしょう。しかし、様々な事情で自宅で育てることが難しい場合もあると思います。その場合は、無理に持ち帰る必要はありません。葬儀社によっては、供花の後片付けの一環として、残った花々を引き取ってくれる場合があります。また、もし菩提寺があれば、お寺に相談し、本堂などに飾ってもらえないか尋ねてみるのも一つの方法です。大切なのは、贈ってくださった方の気持ちと、故人への想いを無にしないことです。故人が繋いでくれたご縁に感謝し、最後まで丁寧に扱うこと。それが、故人に代わって遺族ができる、最大限の礼儀と言えるでしょう。
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蘭の花言葉に込める故人への想い
花を贈る時、その花が持つ花言葉に想いを託すことがあります。葬儀に際して蘭の花を贈る、あるいは祭壇に飾られた蘭の花を見る時、その花言葉を知ることで、故人への想いはより一層深く、豊かなものになるかもしれません。まず胡蝶蘭の花言葉は、純粋な愛、清純です。葬儀で最も多く用いられる白い胡蝶蘭。その花言葉は、まさに故人への追悼の気持ちを表現するのにふさわしいものです。純粋な愛という言葉は、家族や友人、恋人といった、故人を深く愛した人々のかけがえのない想いを代弁してくれます。そこには、見返りを求めない、ただひたすらに相手を想う、清らかな愛情が込められています。また、清純という花言葉は、故人の汚れなき人柄や、高潔な生き様を称える気持ちを表します。純白の花びらのように、清らかな魂が天へと昇っていくように、という願いを込めて、この花は捧げられます。次にシンビジウムの花言葉は、飾らない心、誠実な愛情、高貴な美人です。上品で落ち着いた佇まいのシンビジウムは、その花言葉もまた、故人の人柄を偲ぶのに適しています。飾らない心は、生前、実直で、裏表のない人柄だった故人を思い起こさせます。誠実な愛情は、家族や友人に対して、常に誠実に向き合ってきた故人への感謝の気持ちと重なります。派手さはないけれど、確かな存在感で人々を魅了するシンビジウムの姿は、まさにそんな誠実な人柄の象徴と言えるでしょう。最後にデンファレの花言葉は、お似合いの二人、わがままな美人、有能です。可憐な花を咲かせるデンファレの花言葉は、少し華やかで、直接的に弔意を表すものではないかもしれません。しかし、例えばお似合いの二人という花言葉は、夫婦のどちらかを亡くされた際に、遺された方が本当に仲の良い夫婦だったと、二人の絆を偲ぶきっかけになるかもしれません。もちろん、葬儀の場で花言葉を声高に語ることはありません。しかし、供花として蘭を選ぶ際に、故人の人柄に思いを馳せ、そのイメージに合った花言葉を持つ蘭を選ぶという、密やかな想いの込め方もあるのです。そして、祭壇に飾られた一輪一輪の蘭に、贈り主のそうした深い想いが託されているのだと知る時、私たちの故人への追悼の念は、より一層、心に響くものとなるでしょう。