近年、都市部を中心に急増している「直葬(ちょくそう)」や「火葬式」といった、儀式を最小限に留める略式の葬儀形態では、服装に関する考え方も従来の葬儀とは大きく異なっていると言えるでしょう。これらの形式では、豪華な祭壇や読経を省略し、火葬場の告別ホールなどで短いお別れを行うのが一般的です。そのため、参列者も親族の極少数に限定され、場所も火葬場という実務的な空間が中心となります。このような状況下では、必ずしもフルセットの礼服を着用する必要はなく、上着なしの略装で参列することが、むしろ自然な選択とされる場合が多くあります。特に、真夏の火葬場は火葬炉からの熱気もあり、室温が非常に高くなりやすいため、ジャケットを脱いでワイシャツ姿で過ごすことは、合理的な判断として広く受け入れられています。ただし、略式だからといって、どのようなシャツでも良いというわけではありません。白の長袖ワイシャツを着用し、ネクタイをしっかりと締め、ズボンにはアイロンの折り目が入っているという、清潔感のある姿を維持することは必須です。また、親族間での合意形成も重要です。事前に「当日は暑いことが予想されるので、上着はなしで行いましょう」という連絡を喪主から入れておくと、当日の混乱を避けることができます。もしそのような連絡がない場合でも、現場に到着して喪主が上着を脱いでいれば、それに従っても問題ありません。また、女性の場合も、ジャケットなしの黒のワンピースやブラウススタイルが許容される範囲が広がっていますが、露出が過度にならないよう、肘が隠れる程度の袖丈のものを選ぶ配慮が求められます。略式の葬儀は、形式よりも故人と向き合う「時間」を大切にするための選択肢です。服装に関しても、過度な形式に縛られて身体を壊すよりは、清潔で節度ある略装で、心を込めて最期の瞬間を見送る方が、現代的な供養のあり方として適っているのかもしれません。
略式葬儀における上着なしの服装マナー