葬儀や告別式といった公的な儀式と比較すると、法事は親族間の集まりとしての性格が強いため、上着の着用に関してもより柔軟な対応がなされることが多いです。しかし、その「柔軟さ」にも、暗黙の了解としてのルールが存在します。まず、上着を脱いでも良いとされる代表的な場面は、法要後の会食、すなわち「お斎(おとき)」の席です。食事をする際には動きやすさが求められ、また室内が飲食の熱気で暑くなることもあるため、多くの場合は喪主の合図で一斉に上着を脱ぐことになります。次に、屋外での墓参りです。特に夏場のお盆の時期、遮るもののない墓地で直射日光を浴びながらの読経は、数分であっても身体に大きな負担がかかります。このような場面では、お寺の住職自らが「暑いので上着をお脱ぎください」と声をかけることも多く、その場合は迷わず従うのが正解です。また、親族のみが自宅に集まる小規模な回忌法要でも、空調の効き具合によっては、最初からジャケットを着用しない「略装」での参列が認められることがあります。ただし、これらの場面で上着を脱ぐことが許される前提として、その下に着ているシャツが「白の長袖ワイシャツ」であり、しっかりと黒ネクタイを締めていることが条件となります。時折、半袖シャツで参列し、そのまま上着を脱いでしまう人がいますが、これは腕の露出が多くなりすぎてしまい、弔事の場ではあまり好ましくないとされます。上着を脱ぐことが認められるのは、あくまで「暑さ対策」という実利的な理由からであって、礼儀を放棄して良いということではありません。また、いかなる場合でも、僧侶が読経を行っている最中に勝手に上着を脱いだり、ネクタイを緩めたりすることは厳禁です。儀式という「動」と「静」の時間の切り替えを明確にし、最も重要な局面では必ず正装の形を維持する。このメリハリこそが、法事におけるスマートな上着の扱い方であり、参列者としてのあるべき姿なのです。
法事での上着なしが認められる具体的な場面